コンサータ(メチルフェニデート)についてしらべたこと。1 臨床試験、乱用、依存性
コンサータを使用するにあたり、Medical online を用いて文献を調べてみたのでまとめます。
コンサータはメチルフェニデート(MPH)という薬物です。日本で使用されているMPHには、ナルコレプシー治療薬リタリンとADHD治療薬のコンサータの2種類があります。
MPHは中枢神経刺激薬であり、ADHDの諸症状に対して高い有効性を示している一方で、依存リスクが最大の問題とされています。
具体的には
①作用機序から見て、MPHやコカインは、線条体のドパミントランスポーター(DAT)を阻害することによって細胞外ドパミン濃度を増加させ、依存症に関わる脳内の報酬系という部分に影響を及ぼすこと。(乱用されている薬物やその他の物質のほとんど全てが、報酬系に影響する。)
②MPH服薬が物質依存の危険性を高めているのではないかという懸念
そのため、MPHと依存の関連については多くの研究がなされています、
まず、①についてです。
MPHは静脈投与すると、コカイン同様多幸感は感じられるが、通常の使用方法である経口投与では、多幸感が生じにくくなっています。
この多幸感は、ドーパミン濃度の急激な上昇が影響しており、この多幸感の出現(=ドパミン濃度の急激な増加)が物質乱用の危険性に相関しています。
コンサータは緩やかに長時間安定して血中濃度が維持される形(徐放錠)のため、ドパミン濃度の急激な変化を起こさず、多幸感を感じにくい、そのため乱用リスクは低いと考えられています。(乱用が問題となったMPHのリタリンは、即効性のある速放錠です。)
ちなみに、コンサータを鼻から吸うと大変なことになる、という噂を耳にしたことがありますが、徐放錠であるコンサータには乱用回避の工夫がされています。
例えば、金槌でも粉砕できない、溶解できないなどの特徴があるため、経鼻吸入、静脈投与が物理的に不可能になっています。さすがですね。
また、②についてもヒト試験による調査が行われています。ドイツをはじめとした海外のいくつかの試験により、小児ADHD患者のMPH治療群と非治療群を追跡調査したコホート研究では、MPHによる薬物治療を1年以上実施した群の方が、1年未満、非治療群と比べて成人後の薬物など依存物質使用が統計的に有意に低いという結果が示されています。
つまり、ADHD患者はもともと依存症リスクが高いため、MPHによる薬物治療を行った方が、長期的視野で見た時の依存形成を抑制効果が期待できると考えられます。
また、依存形成しにくいもう一つの理由として、心理的な要因も考えられています。
MPHで治療を行うことにより、ADHD症状が緩和され、家庭内、友人同士、学校生活など社会的かかわりが改善され、心理的安定性をもたらすことで依存症になりにくくなっているのかもしれないというものです。確かに近年、依存症は愛着障害との関連や孤独の病であるとも言われているので、この人間関係の安定性は重要かもしれません。
さらに、ラットにMPHを長期投与することにより、依存に対して保護的な役割をするCREBというタンパク質を側坐核で誘導するという報告や、線条体のDAT(ドパミントランスポーター)密度が減少するという報告もあります。側坐核も線条体も、依存形成に関わる報酬系の中の部位です。これにより薬物使用時の快感が得られにくくなり、依存形成から保護してくれる可能性があります。
詳細なメカニズムは未だ不明ですが、ヒトでも証明されれば、有用性がさらに確立できることが期待されます。